ひと粒のそば

■ひと粒のそば■


そばといえば、やはり「かけそばだ」とか「私はもりそばがいい」などという話になるのでしょうね。
古典落語にも『時そば』というのがありますが、時を知らせる鐘の音を巧みに使ってそばの代金をごまかす様や、寒い晩に屋台のそばをすする情景がなんとも平和ではありませんか。
昔から庶民の暮らしの中にどっしりと根をおろしている食品だったのでしょう。
たいていの人が「そば」といえば麺―「そばきり」を連想するのではないかと思います。産地の人でもなければ、白くて可憐なそばの花やそばの実を思い浮かべたりはしないのではないでしょうか。
「そばの実?」なんて驚きの声を発する人もいるかも知れません。
私たちが「そば」と呼んでいる「そばきり」は、そば粉をただ水とこねても粘弾性のある生地になりにくいため、「そば粉」に、つなぎとして小麦粉やナガイモ、卵白などを混ぜて作ります。小麦粉が一般的に用いられるようですが、その割合は地方によってまちまちです。
そして「そば粉」は、そばの実の殻をのぞいて製粉したものなのです。
ソバ(蕎麦)は、アジアの内陸部原産とされるタデ科の一年草で、古くから中国で栽培されていました。米・麦・とうもろこしなどの他の穀物とちがいイネ科ではありませんが、その用途から、穀物として扱われています。日本にもムギ類につづいて入ってきたといわれます。
古くはハトムギとかクロムギと呼ばれ、乾燥地でもよく発芽し成長も早く、開墾地や傾斜地、やせ地でもよく育つので、救荒用の作物として重視されていました。
日本では北海道・鹿児島・栃木県などが主産地ですが、現在国内の需要の多くをまかなっているのは、中国・カナダ・アメリカ・ブラジル産などのものなのだそうです。
栄養的には、ビタミンB1B2や無機質が多く、特に良質の蛋白質を13%以上も含むことや、毛細血管を強くし高血圧の予防にも役立つというルチンを含むなど、なかなか優秀な食品です。
殻をのぞいた「そば米(むぎそば)」は、白米に一~二割混ぜて炊いたり、味付けした鶏肉や野菜などと雑炊にしてもおいしいですね。
白米といっしょに炊くと、小さな三角錐状のそば米は、少し褐色を帯びて見えます。そば米と白米の食感の違いも楽しめますから、召し上がったことのない方はぜひ試してみて下さい。水加減は、白米だけのときより多めにすると良いようです。
そば殻も昔はずいぶん活躍していましたよね。枕がそうでした。
そば殻の枕は、寝返りをするたびにガサゴソジワッと音を立てるのですが、あの乾いた感触の心地よさ、捨て難いと思いませんか。
そばがき、そば湯、そば焼き、そばまんじゅう…。
「そば」は、日本の大切なひと粒です。

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