ひと粒の大豆

■ひと粒の大豆■


特別意味を深く考えもしないけれども、子供のころから「五穀豊穣」という言葉は知っていたという人は案外多いのではないでしょうか。
知っていたというより、ゴコクホージョーという音が耳慣れていたというべきかも知れません。
「五穀」が五つの穀物を指しているのだろうということは、おおかた察しがついても、それ以上に疑問を持つこともありませんでした。
米・麦・粟・黍・豆。この五種類の穀物を「五穀」というのだそうです。
いまではあまり馴染みのないものもありますが、どれもうなずける穀物ですね。
もっとも「五穀豊穣」の「五穀」は、総じて穀物全体を指していると考えた方が自然なようです。
豆は特に大豆を指していたようで、「古事記」にも大豆を五穀のひとつと記してあります。
大豆は、東アジアが原産地で、中国では五千年も前から栽培されていたのだとか。
わたしたちの毎日の暮らしの中でも大豆は欠かすことの出来ない食品です。
豆腐、納豆、ゆば、きな粉、厚あげ、油あげ、がんもどき、凍り豆腐、おから、豆乳などをはじめ、味噌、醤油が日本の味の原点ともいうべき食品であることは言うまでもありません。
その栄養的価値から、「畑の肉」と呼ばれることも広く知られていますが、最近ではむしろ肉の代用食として、大豆そのものや豆腐が多く使われるようになりました。
たんぱく質はもちろんのこと、ビタミンB1、食物繊維、マグネシウムも多く含む大豆なら納得できます。
ひとくちに大豆といってもその用途に応じてかなり種類が多く、普通、大豆といえば黄または黄白色の「黄大豆」を言います。
そのうち料理に多く使われるのは“大粒種”でへそ(・・)の色の白いいわゆる“白目”のもの。
中粒以下の大豆は、おもに加工品の原料とされているようです。
大豆も他の農産物の例外ではなく、特に加工品原料の多くは輸入大豆に依存しているのが現状です。
世界的にみても豆類の中で大豆の生産量がいちばん多いのですが、輸入大豆は国産の大豆にくらべて脂質が多く、本来日本の伝統的な食品には不向きだと言われます。
それでも、国内産大豆の生産量が需要にはるかに及ばないところから、さまざまな手を加えて使われているわけです。
それにしても、国内産大豆の品種の名称をみると、米と同じで、各地方で大切に作られてきたことがよくわかって胸が熱くなります。
ゆうづる、白鶴の子、とよすず、宮城白目、えんれい、すずゆたか、たまほまれ、あき白目、ふくゆたか…。
その栄養的な価値もさることながら、長い長い時間をかけて育まれてきたものの持つぬくもりも、忘れたくありません。

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